2015年7月
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2.市場へ

 そんなある日のことです。ノコさんは、イバラードの駅前市場へ買物に行くことになりました。
「そうだ、カンナちゃんもいっしょに行くかい?何か思い出すかもしれないしねぇ。」
 カンナちゃんはにっこり笑ってうなずきました。
 二人は、森の停車場からジーマに乗りました。すきとおったルリ色のあめ玉のような車体はすべるように走り出し、カンナちゃんは屋根ぜんたいが窓になっている、客車の先頭へとかけていきました。
 森をぬけ、列車は草原へ入って行きます。遠くに高い塔がちらちらと見えます。カンナちゃんは窓に顔をくっつけて、外をながめています。
「この辺りには、あんな赤い塔はないわねぇ。」とノコさんが言いますと、カンナちゃんはこっくりうなずいて、遠くにかすかに見える白い三角を指差しました。
「あれはなあに?」
「あれはラオ・ハルンといって、イバラードで一番高い山だよ。」
「イバラード? ここはイバラードなの?」
「そうだよ。おやおや、知らなかったのかぃ?」とおどろいてノコさんが問い返すと、カンナちゃんは何も言いませんでしたが、その目はきらきらとかがやき、ほっぺたがはじけそうなほど、にこにこしはじめました。

 ジーマはときどき停車し、お客さんを乗せたり降ろしたりしながら、だんだん高いところを走るようになりました。草原や木々は、緑におおわれた建物へと変わってゆきます。
 やがて列車は線路の上にも屋根のある、大きな大きな駅にとう着し、二人を降ろして走り去ってゆきました。

 イバラードの駅前にある市場は、まるで迷路のように広く深く、ところによっては高く高く空へと上ってゆきます。そこには大小さまざまな店がたち、各地から集められたありとあらゆる品物が、ところせましと並べられています。
 ノコさんはまず、新鮮な海の魚が山と積まれた店に立ち寄りました。
「こんにちは。今日は何がおすすめかねぇ。」
「おう、ノコさん。そうさなぁ、…」
 カンナちゃんはその間、興味しんしんで色とりどりの魚たちに見入っています。魚たちはどれもぴかぴかに光っていて、目は今にもこちらをギョロっとにらみそう。
 と、中の一ぴきがヒレをばたばたさせたかと思うと宙を泳いでにげ出しました。
 カンナちゃんはびっくりぎょう天。
「わぁっ、飛んでる、にげてる!」
 店の主人はなれたようすで手にした棒をひょいとふり上げ、空飛ぶ魚の頭をぽかりとなぐりました。魚はぱたりと地面に落ちました。
「まぁ生きのいいこと。それももらおうかしらね。」
「あいよっ。まいどあり。…ところでそのおじょうちゃんは?」
 そこでノコさんはカンナちゃんのことを説明します。
「ふうん、あいにくだが知らないねぇ。」
「そうかね。しょうがないねぇ。」
  ノコさんはかごいっぱいの魚をふくろにつめてもらい、次の店へ移ります。
 今度は甘いにおいのただようまんじゅう屋。店先に蒸したばかりのほかほかのまんじゅうがてんこ盛りです。
 ここでもノコさんはなじみの店主にカンナちゃんのことをたずねてみたのですが、やっぱり知りませんでした。

  こうしてノコさんはあちらの店、こちらの店、と買い物をしてまわりました。カンナちゃんはもう見るもの聞くもの面白くてたまらないようすです。
 でも、だれにたずねても、カンナちゃんや、『写真』にある例の赤い塔のことは、わかりませんでした。

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