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6.夜の駅で

 飛行士に送られて、カンナちゃんとチヤキさんがカフェへもどったころには、日も落ち、辺りはすっかり暗くなっていました。…いいえ、真っ暗ではありません。市場では立ちならぶ明かりをつけた店から、品々が光をはなち、今にもこぼれださんばかりにあふれています。
 ふたりはイバラード駅からジーマに乗りました。ふたりがあまり遅いので、ノコさんはカフェの店主にことづけて、先に帰っていたのです。
 森の停車場には、ノコさん、ギリさんが待っていました。
「遅かったねぇ~」ふたりの姿を見てノコさんはほっとしたようでした。
 チヤキさんは、ミストラル・ケイブでの一部始終をノコさんたちに話しました。
「じゃあ、カンナちゃんのことは結局わからなかったのかねぇ?」
「ううん。」答えたのはカンナちゃんでした。
「思い出したことがあるわ。わたし、どこかへいきたいと思って列車に乗ったの。そしたら、この駅に着いてしまったの。」それは急に大人になったような口調でした。
「ジーマはかしこい電車だからね。そういうことも、あるかもしれない。」チヤキさんがうなずきました。
「…だから、もういちど列車に乗るね。…それでかえれるかどうかはわからないけど…」カンナちゃんはぽつりと言い添えました。

 新しいジーマが到着しました。きっとカンナちゃんを運ぼうと、やってきたのでしょう。カンナちゃんはノコさん、ギリさん、チヤキさんにぺこりとおじぎをすると、列車に乗りました。
「…あの赤い塔の場所をもう一度、思いうかべて、そこへ行きたいと思うんだよ。そうすれば、きっとジーマが運んでくれるから。」
 客車の窓の外から、チヤキさんが声をかけました。
「…うん。」
「でも、もしまたイバラードへ着いてしまったら…」
「そのときはまた、うちの宿をたずねてくれたらいい。いつでもかんげいするからね。」ギリさんがまんめんの笑みで言うと、
「おいしい料理をたくさん用意して待ってるからねぇ。元気でね。」ノコさんもつけ加えました。
 うん、とカンナちゃんはうなずいて、にっこり笑ったようでした。とびらが閉じ、列車がゆっくりと動き始め、三人は手をふって見送りました。
 その姿はあっという間に小さくなり、夜の闇に消えてゆきました。

「結局、なんだったんだろうかねぇ、あの子は。」
「さぁ…」
 ノコさんもギリさんもちょっとさびしそうです。
「また来るかもしれませんよ。おふたりに会いに、今度は旅人として。」
 チヤキさんはふたりをなぐさめるように言いました。

…そうとも、むかしのわたしのように。ふらっと、なつかしいイバラードをたずねて。

(おわり)

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